18年07月05日(木)くもり。今日一日、お店であったあんなことやこんなことだったり、思ったことなどを綴ります。
- 2018年7月のガイダンス開催日
- 07月14日(土)16時~17時
- 07月19日(木)16時~17時
- 07月28日(土)16時~17時
※ お申込み方法はコチラの詳細PDFをご確認ください
今日のリッラ・カッテン
フィンランドでの旅行をテーマにした「とっておきのフィンランド ― 絵本のような町めぐり かわいい、おいしい、幸せ体験」という一冊をご紹介。
リッラ・カッテンはスウェーデンがテーマの店なのに、なぜ突然フィンランド関連の本を紹介するのかというと、当店のスウェーデン語のレッスンに参加してくださっている、内山さつきさんが、カメラマン/ライター/編集を担当するユニット「kukkameri(クッカメリ)」が手掛けた本なのです。
今日、レッスンのためにお越しいただいた際に発売になったばかりのこの本を献本いただきました。ありがとうございます。献本いただいた本は、来週あたりからお店で自由に手に取って読める形にしたいと思います(今週は個人的に貸してください)。
せっかく内山さんがいらっしゃるのであれば、いい機会なので本についてのお話を伺わせていただこうと。さらにせっかくお話を伺わせていただけるのであれば、この場で紹介するのがスジでしょうと。そんなに影響力のある店ではないけれども、微力ながらこの本が世に認知していただけるよう一助となれれば嬉しいです。
というわけで、内山さつきさんが参加しているスウェーデン語のレッスンが終わってから「この後にお時間空いているようでしたらお話をお聞かせ願えませんか?」と、贅沢に一対一でお話をさせていただくことになりました。ゆっくりお話させていただくのは、いつぞやスウェーデン大使館で開催された「スウェーデン系フィンランド文化の日」の講演会でお会いした際にすこしの時間お話した以来でしょうか。あの時もそんなにゆっくりできませんでしたけどね。
個人的に”本づくり”に興味もあるので、現在はフリーの編集者、ライターとしても活動されている内山さんから出版に至るまでのいろいろなハナシを伺わせていただきたいという魂胆も。出版までの興味深い苦労話も聴かせていただきましたけど、やっぱり苦労話ってどこの業界にもあるものですね(念のために内容は伏せますが)。
ところで「なぜスウェーデン語レッスンに参加してくださっている方がフィンランドの本を?」という疑問をお持ちの方もいるかもしれませんが、きちんと理由があります。北欧に造詣が深い方のなかにはご存知の方も多いかと思いますが、おさらい。
上記は自分がヘルシンキ市内で撮影した写真のひとつ。通りの名前が2つ掲示されていて、上段の「MIKONKATU」はフィンランド語の表記、下段の「MIKAELSGATAN」はスウェーデン語の表記となっています。
このような地名の表記などからも窺えるように、フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語の2つです。そしてフィンランドのなかでもスウェーデンとの国境付近には、現在でもスウェーデン語を生活言語にしている人々が暮らしています。そしてムーミンの作者であるトーヴェ・ヤンソンもその一人でした。
で、内山さんはかつて携わったトーヴェ・ヤンソンに関する取材の仕事を通じて、次第にフィンランドに興味を持つようになったとのことです(探したら自宅の本棚にも内山さんの名前が記載されているピンク色の表紙のムーミン特集号の絵本雑誌ありました)。
「とっておきのフィンランド」の本文でも、フィンランドのスウェーデン語生活圏に位置する「Tammisaari(タンミサーリ)」という街などが紹介されていますが、内山さんによれば、そこで暮らす8割~9割ほどの人々がスウェーデン語で生活しているそう。そういった地域でスウェーデン語でコミュニケーションが取りたいというのが内山さんのスウェーデン語学習のモチベーションとのこと。おもしろいきっかけですね。
この本ではトーヴェ・ヤンソンに縁のある土地について多く紙面を割かれています。ただ、決して世間のムーミン需要の高さに迎合する形でページ数が多くなったわけではなく、内山さんのトーヴェ・ヤンソンに対する純粋な興味の深さからこのような構成になったということは、お話を伺っているなかで感じられました。だって、「彼女の作品では”少女ソフィアの夏”が一番好きです!」なんて発言はウソじゃ出てこないですよ。
そういったフィンランドの公用語の背景もあり、スウェーデン語を勉強している方にとってフィンランドは旅行しがいのある国だと思います。フィンエアーを利用してスウェーデンに渡ろうとすると、一旦ヘルシンキに立ち寄りますしね。そこでストップオーバー(乗継ぎ地での滞在)の制度をうまく利用すれば、フィンランドを楽しんだあとにスウェーデンに向かうということも可能ですし。
スウェーデン語を勉強しているヒトにとって、言語的あるいは文化的な共通点も多いフィンランドは、ただのスウェーデンの隣国というだけではないのです。だからリッラ・カッテンとしてフィンランドの紹介をすることは不自然なことではないんですよ。スウェーデン語を勉強するのであれば、ぜひフィンランドにも行ってほしいのです。
「とっておきの…」にハナシを戻しますが、内山さんからお話を聴いている中で最も共感できたのは「ネットで調べてもなかなか情報が出てこないような場所を積極的に紹介したかった」という点。フィンランドへはツアーを利用して行く人が多いけれども、そうすると良くも悪くもありきたりな観光名所めぐりに終始してしまうことが残念なので、個人で自由にフィンランドを旅行する人が増えてほしい。そんな願いを込めてこの本をつくったそうです。
だからあえてネットでもある程度の情報が得られるであろう首都ヘルシンキのボリュームは絞ったようで、ヘルシンキの紹介は第3章として掲載されている一方、第1章では少々マニアックな各地方都市の紹介にページが割かれています。
さらに言えば、本のタイトルや帯の解説文を含めて、この本の表紙のどこにも『北欧』の2文字がなかったことにその姿勢が見えました。世の中の興味を惹くという意味では『北欧フィンランド』なんてしたくなりますが、あくまでフィンランド一本で勝負するという意気込みが伝わるタイトルだと感じました。リッラ・カッテンも『北欧』のキーワードはなるべく自発的に使わないように意識しているので、その点ではお互いに世の中に対して少々頑固かもしれませんね(失礼)。
で、「ヘルシンキ以外ではどこの街がオススメですか?」と尋ねたところ、返ってきたのがヘルシンキから列車で4時間の「Savonlinna(サヴォンリンナ)」という街の名前。サヴォリンナでファームステイができる施設を紹介していて、日本でも有名なサウナ後に湖に飛び込むフィンランド式サウナの楽しみ方を体験できる場所も近くにあるようです。
サヴォリンナの項に掲載されている写真を見る限り、宿泊施設の近くにはホント何もなさそう。でも、なにもすることがないこと自体がフィンランド体験のひとつなんです。なにもアクティビティが用意されていない自然のなかで、「自由にどうぞ」と言われて自分ならどう振舞うか。日本、とくに東京の喧騒とのギャップに驚く方もいると思います。
日本にいると、コンビニがあったり、自動販売機があったり、モノが溢れかえっていますけれども、何もない自然のなかに数日間身を置いてみると、「周りにモノや情報がなくて不便だな」と思う一方で、「それでも、とりあえず自分は生きているんだな」って気が付きます。つまり、モノや情報がなくても必要最低限のモノがあれば人間って生きていけるんだということを悟っちゃうのです。
かつて自分が大学時代にスウェーデンを旅したとき、驚くほど何もないスウェーデンの街に滞在したことがありました。勘違いでその街にたどり着いてしまって、結果3日間ほどそこで過ごしたのですが、いまでも「あの街は見事に何もなかったな」ということを憶えています。結果的にはいい経験でした。余談ですが、いつかその旅について記憶している限りのことを書くかも。2度ほど日本に帰れなくなりかけたし、壮絶でした。
悟りの境地に至りたい方は、サヴォンリンナの紹介ページを読んで、そこで紹介されているファームステイでもしてみるがいいさ。
フィンランドのスウェーデン語生活圏である「Tammisaari(タンミサーリ)」、サウナを含めたフィンランドの自然を満喫できる「Savonlinna(サヴォンリンナ)」。自分はこの2つの街に興味を持ちました。
この本では紹介されていないけれども、フィンランドの自治領でありながら、ほぼ完全なスウェーデン語圏である「Åland(オーランド諸島)」にも行きたいし。意外とスウェーデンよりもフィンランドの方が行きたい街が多くてどうしよう。
内山さんとはもっとお話したことがあったのですが、あんまり長くなってしまっても読む方も疲れてしまいますし、もし興味を持った方がいらっしゃれば「『とっておきのフィンランド』発売記念トークショー」が2回にわたって開催されるようですので、そちらに参加するのがいいでしょう(教科書通りのまとめ)。
四方山話として、古い絵本の紙質のよさだったり、日本語訳版のブックデザインに対するあーだこーだなど、まあマニアックな話もさせていただきました。本をつくることに対して、こだわりと情熱を持っている方でよかったです。
トークショーの情報が記載されたDMをお預かりしたので、店頭でも配布させていただきます。DMに記載されている開催情報は以下に書き写しましたので、興味のある方はチェックしてください。
詳細・参加予約は、各会場のサイト、メールにて。
在廊予定・最新情報は、ツイッター kukkameri_info にてお知らせ。
● トークショー開催時間内の入店は、ご予約の方のみとさせていただきます。
で、こんな話題の回でしたから、登録したスウェーデン語絵本情報もフィンランド、ひいてはトーヴェ・ヤンソンに縁のある本を。スウェーデン国営ラジオが制作した、キッモチ悪いムーミンの実写ドラマ番組。手が完全に人間だし、掲載されている写真のなかではムーミンの着ぐるみのアタマ部分を脱いだ”胴体ムーミンおじさん”が随所に写っていたり。”雑”の一字に尽きるけれども、そんな時代もまた良し。
Mumintrollen av Tove Jansson(トーヴェ・ヤンソン)
王様は高い塔の上から望遠鏡をのぞいていました。するとムーミン谷に住むムーミン一家の姿を目にしました。ムーミンパパ、ムーミンママ、ムーミン、ミィ、ロッドユール、フィリフィヨンカ、ミーサンと怖くなるとスグにバケツに隠れてしまうミーサン飼イヌのインクでした。彼らの様子を見れば見るほど彼らに教育を施してやる必要があることの確信が強まってきた王様は、ついにムーミン一家を自分の城へと招きました。ムーミンはテーブルマナーやメヌエットを踊ることを学んだり、食べるのが難しいスパゲッティなどの食べ方の練習が必要でした。しかし、王様の冠に何が起こったのでしょう?なぜムーミンパパは大砲をデザートに撃ち込んだのでしょう?なぜ王様は透明になってしまったのでしょう?トーヴェ・ヤンソンとラーシュ・ヤンソンがストーリーを語ります。TV2が冒険のすべてを記録し、一連のドラマ作品からこの本の写真が撮影されました。
ビョルネン・ソベル