多くのスウェーデン語絵本を扱うリッラ・カッテンが、自分たちで実際に読んだスウェーデン語絵本を紹介します。目標はとりあえず100冊です。お店では扱わない作品、または絶版の作品もあるために入手が難しい絵本も含みますがご容赦ください。
1999年出版
Första boken om John Bauerヨン・バウエルについての最初の本
著:Lillemor Nordström(リッレモール・ノードストルム)
森のトロールや妖精をテーマにした幻想的な作品を多く生み出したヨン・バウエルの生涯を子どもにわかりやすい形で紹介している本です。
個人的に日本で紹介されている様子をあまり見たことがない、ヨン・バウエルというスウェーデンの画家。1882年にストックホルムとヨーテボリのあいだに位置するJönköping(ヨンシューピング)という街に生まれました。いまでもヨンシューピングの美術館にはヨン・バウエルにまつわる展示がされています。
学校でクラスメートや先生を描いては褒められ、両親もその才能を認めて美術を学ぶためにストックホルムの学校へ通うことになりました。学校が休みの日にはヨンシューピングへ戻り、森へ行っては樹木や野生動物がどのような外見をしているかじっくり観察していたそうです。そのときの経験が彼の作風に活かされ、トロールや妖精をモチーフにした多くの作品を生み出したと思われます。
彼の名をスウェーデンに知らしめたのが『Bland tomtar och troll(妖精とトロールに囲まれて)』という子ども向けの本。それほど子ども向けの読み物が充実していない時代において、やはり子どもにも読むものが必要だろうという思想のもと、毎年クリスマスの時期に発行されるようになった本です。初期においてヨン・バウエルは多くの作品を挿絵として寄せていました。
ヨン・バウエルの生涯は短くして終わりを迎えます。
彼が36歳であった1918年、一家で引っ越ししようとストックホルムへ向かうため、ヨンシューピングのすぐそばにあるVättern(ヴェッテルン)湖を渡るための船に乗ります。しかし船は嵐に飲まれて湖の底へ沈んでしまい、ヨン・バウエルを含む一家は帰らぬ人となってしまいました。
自分自身、彼の作品を見るためにヨンシューピングを訪れたことがあります。とても印象的で思い入れのあるスウェーデンの作家の一人です。
ビョルネン・ソベル