ビョルネンは時間泥棒@19年04月26日(金)

スウェーデン洋菓子店のブログのようなものですが、スウェーデンがまったく関係ない話題ばかり。

「御魚ギャラリー」展示内容

  • 19年04月09日(火)~19年05月31日(金)
    『スウェーデンの学校の国語教科書展』

店内イベント

  • 【満席】 19年04月26日(金)/27日(土)12時~
    スウェーデン伝統スクエアケーキ2種

店外イベント

スウェーデン語教室

今後のガイダンス開催予定日(いずれも16時~17時)
  • 【05月】18日(土)/23日(木)

今日の時間泥棒


書く話題に窮したら昨日の話題に関連したエピソードに触れようと思っていましたが、早速今日は書くことがなかったので、昨日に引き続き「Prinsarnes Blomsteralfabetプリンサネス・ブロムステルアルファベート(王子たちの花文字)」のポストカード制作のハナシの続き。

写真は、お店の常連さんであるリネアさんから戴いた「王子たちの花文字」に掲載されている『A』から『Ö』までが一覧できるように配置されている下敷きサイズのシートの一部。もちろんスウェーデン語のアルファベット29文字が配置されています。


さて、こちらが以前も紹介しましたが、自分が所持していた1934年版(左)と1968年版(右)の2冊。これらを基に今回の「王子たちの花文字ポストカード化計画」を行えばいいと考えていました。楽勝。

だが、世の中うまくできているもので。ご多分に漏れず、今回のプロジェクトにおいても物事が一筋縄に進むことはなかったのです。

いざポストカードを制作するにあたって今一度この2冊に掲載されているアルファベットに目を通しながら全体的なバランスをどうしようかと考えていると、なぜか『W』が見当たらない。つまり、『V』のページをめくると、そこには『X』があるのです。でも一覧シートにはちゃんと『W』があるし、これはいったいどういうことか。

英語における『W』は「ダブリュー」と読むことができますが、つまりは「ダブル・ユー」なんですよね。『U』が2つ連なっている状態。スウェーデン語における『W』は、アルファベット単体では「ドゥッベル・ヴェー」と発音します。日本人にわかりやすく英語風に直すと「ダブル・ブイ」で、『V』が2つ連なっている状態。

で。『W』に対応したイラストに描かれている植物は「ケシ」であり、一覧シートにはスウェーデン語名が書かれていませんが、「Wallmo」の頭文字の『W』なんですね。

しかし、この絵本が製作された1892年当時のスウェーデン語と現代のスウェーデン語は微妙な違いがありまして。日本でも夏目漱石らの当時の小説を読むと現代語と綴りが微妙に違ふやうに、現代的綴りにおいて「Wallmo」は「Vallmo」であり、頭文字が『V』になっているのです。

以下は憶測。最初の自分の憶測では「ケシはある意味ヤバい植物だから抹消されたのかな」なんて考えていましたが(ちなみにアヘン戦争は1840年勃発らしい)。

このABC本は、当時の子供たちがアルファベットを憶えるための助けとなることを期待されていた絵本だった側面もあるようなのですが、日本でいうところの”歴史的仮名遣”的な古い綴りである「Wallmo」のまま掲載し続けることは、その精神に反するという判断がされて『W』が削除されてしまったのかな。

この「王子たちの花文字」製作当時にあった”古い綴り”は明日のハナシにも関連してくるので、よかったらアタマの片隅に入れておいてください。


しかし、所持している2冊に『W』がないとなると、現代のスウェーデン語において『W』がなくてもあまり困らないし、しれっと『W』の1文字が足りない状態でポストカードにしてしまおうとも考えました。でも、もし渡辺謙が「自分のイニシャルのアルファベットが欲しいぞ」と思ったときに残念な気持ちにさせてしまう。

そこで。ダメ元でネット上の情報を探して、初期の「王子たちの花文字」を売っている古本屋がないか探したところ、運よく見つかったので取り寄せたのです。かつて一度探してみたときには見つからなかったので、本当にいいタイミングで売り出されていて助かりました。

最終的にスウェーデン語を構成するアルファベット29文字がきちんと揃った状態でポストカード化することができたのです。でめたし、でめたし。

じつは、ダーラナにあるオッティリア・アーデルボリ美術館のお問い合わせフォームから、『W』の文字に関する情報がないか連絡をしてみたのですが、いまのところ音沙汰なし。スウェーデンって、ダメ元で問い合わせてみると意外とマジメな返事をくれることが多いイメージがありますが、まあ仕方ない。

今後、オッティリア・アーデルボリに関する資料は集めておこうと思っているので、そのうち何かわかってくるかもしれません。

そういえば、『W』で思い出した。先日、日本橋駅から東日本橋駅まで徒歩で移動した際に久松警察署の前を通ったのですが、その警察署の真ん前を通る歩道に”W浅野”って書いてありました。あとで店長にそのことを話しても、育ってきた環境とか違うから、そのトレンディさを理解してもらえませんでした。とはいえ、自分も「あぶない刑事」に出演していた浅野さんの方しか知らないんですけど。

おしまい。

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper
2024 © スウェーデン菓子「リッラ・カッテン」