いまでもスウェーデンで人気の高い絵本作家、ヤン・ルーフ(Jan Lööf)の絵本デビュー作です。個人的にヤン・ルーフ作品のなかで一番気に入っている絵本です。
En trollkarl i Stockholmは、「ストックホルムのとある魔術師」という意味。
1966年の作品(この本は1979年印刷)。ヤン・ルーフはスウェーデンの美術大学に1964年まで通っていたそうなので、それから2年後の絵本作家デビューです。
この絵本は最初から最後までモノクロ印刷。終始サインペンで物語は描かれていますが、白黒だけのストイックな環境がサインペンの良さを引き出しています。
荒いけれども味のあるイラスト。主人公は移動遊園地ではたらく魔術師。トラクターで遊園地を引きながら各地を転々として生活しています。
遊園地ではたらいているとはいえ、彼はおそらく本当の魔法がつかえる魔術師。だんだん遊園地ではたらくのがつまらなくなってきてしまった様子。魔術師でいることもラクではないようです。
ついに憧れの街暮らしをするために勤めていた遊園地をやめてストックホルムへ引っ越すシーン。本の裏表紙のあらすじにも書かれているのですが、彼は実際に飛ぶことができるのです。そして、このページが一番お気に入り。あるレトロ絵本を紹介している書籍でこの絵本のこのページが紹介されているのをみたときから欲しいと思っていました。
まだヤン・ルーフが駆け出しのころの一冊ですが、現在の彼の絵のテイストと比較してみても楽しい一冊です。
日本ではまだまだ知名度の低いヤン・ルーフの作品ですが、知名度とか関係なく自分が「コレだ!」と思える個性的なお気に入り作家が見つけられるのがスウェーデン絵本の魅力の一つでしょうか。