「ヤンソンの誘惑」の「ヤンソン」とは誰なのか
スウェーデン、ひいては北欧に興味をお持ちの方は「ヤンソンの誘惑」の名前を耳にしたことがあるかもしれません。簡潔に言えば”アンチョビが入ったポテトグラタン”であり、スウェーデンにおける正式な名称を「
さて、この不思議な「ヤンソンの誘惑」という名前はどこから来たのでしょう。スウェーデンにおいて複数の説があるようです。
「ヤンソンの誘惑」はスウェーデンのポテトグラタンの名前
ヤンソンの誘惑はポテトグラタンの一種。素材に欠かせないのは、もちろんジャガイモ。ジャガイモは細切りにされていたり、短冊切りにされていたり、基本的には細長い状態にされることが多いようですが、様々なカタチにカットされることがあるようです。
ジャガイモの他には生クリーム、タマネギ、アンチョビ(カタクチイワシの塩漬けをオリーブオイルに浸したもの)、パン粉などが主な食材となります。
基本的にはオーブン用皿のなかに具材を配置し、そのままオーブンで調理したものをテーブルの上に提供します。大皿からそれぞれが必要な分だけ自分の皿に取り分けて食べるのがスタンダードです。
あらゆる食事の場に登場することがある料理ですが、イースター、夏至祭、クリスマスなどの大勢が集まる行事に合わせて愉しまれることも多いようです。
19世紀のオペラ歌手「Per Janzon 説」
由来の1つにあるのが料理に精通したオペラ歌手、
オペラ歌手であったヤンソンさんは、晩餐にアルコールやアンチョビ入りのポテトグラタンでもてなすことが知られていたようで、そのことがきっかけとなりアンチョビ入りポテトグラタンを「ヤンソンの誘惑」と呼ぶようになったというもの。
しかし、「ヤンソンの誘惑」という料理が一般に知られるようになったのは、オペラ歌手ヤンソン氏の死後40年ほど経ってからとされているとのことです。
後述する別の説が登場するまではこの「オペラ歌手ヤンソン説」が主流と見られていた様子が伺えます。
1928年公開の映画「Janssons frestelse 説」
スウェーデンにおける美食文化を広めるための活動をしている「Gastronomiska Akademien(美食アカデミー)」という団体より、「Gastronomisk Kalender 1989」という書籍が出版されました。そのなかで「ヤンソンの誘惑」の名前の由来について別の由来が説かれました。
ストックホルムの
スウェーデン版Wikipediaにおける「Jansons frestelse」の説明には、婦人が友人たちとこの映画をある日のパーティーの直前に観たとも書かれています。
真偽のほどは定かではありませんが、現在のスウェーデンにおける「ヤンソンの誘惑」という料理名の由来はこちらの「映画”ヤンソンの誘惑”説」が支持されているようです。
日本で有名な「菜食主義者説」はスウェーデンに存在しない様子
日本で「ヤンソンの誘惑」について紹介される際、もっとも多く引き合いに出される名前の由来として以下のようなものがあります。
日本における「ヤンソンの誘惑」紹介時の料理名の由来
菜食主義のエリク・ヤンソンという宗教家があまりにもおいしそうな見た目と匂いに勝てずついに口にしてしまった
ですが、この説を裏付ける説明をスウェーデン語で見つけることはできませんでした。たしかに宗教に関連した人物として
日本でいつからこの説が出回るようになったのか定かではありません。しかし日本版Wikipediaにおいて「ヤンソンの誘惑」の情報が最初に登録された2008年9月21日の時点で既にこの説が紹介されていたようです。
もし『宗教家エリク・ヤンソン説』の根拠となる有力な情報をご存知の方がいらっしゃれば、ぜひご一報ください。