セムラ、スウェーデンの春の訪れを告げるお菓子の基礎知識

「セムラ」の基本を知ろう

その存在を知らない人間からすれば、十中八九「シュークリーム」と答えるであろう、スウェーデンの春の訪れを告げるお菓子「セムラ(Semla)」。セムラについて何も知らないヒトに向けて、「セムラとは何ぞや」という疑問に対する基本的な知識をお届けします。

セムラに使用するのはシュー生地ではなくパン

外側はパン、中身は生クリームとアーモンドペースト

スウェーデンのセムラを主に構成するのは、パンと生クリーム、そしてアーモンドペースト。焼いたパンの上部を切り離し、切り口からくぼみをつくるようにパンをくり抜きます。くぼみを作るためにくり抜いたパンはアーモンドペーストに混ぜ込み、元のくぼみの部分に詰め込む。その上に生クリームを重ねて、切り離しておいたパンの上部を乗せてフタのようにするのです。

スウェーデンにおけるセムラに使用するパンはカルダモンを含むことが一般的。パンのフタは提供する店によって、楕円形や三角形であることも。セムラの仕上げとしてフタに粉砂糖を振りかけることもあれば、特にヨーテボリ地方などでは砕いたアーモンドやパールシュガーを散らすスタイルもあったり、バリエーションに富んでいます。

イースターはスウェーデン語で「Påsk(ポスク)」といいます

スウェーデンにおけるセムラのシーズン

スウェーデンの街中にセムラが登場するのは、一般的にクリスマス翌日からイースターに掛けて。つまり、冬の辛くて寒い時期から、いよいよ春になるという時期までがセムラのシーズンというわけです。

カトリックにおいてイースター前には断食の習慣があり、断食前に滋養を摂るために高カロリーな甘いものを食したとされています。その日にあたるのが「Fettisdagenフェッティースダーゲン(肥沃な火曜日)」であり、英語圏において「パンケーキ・デイ」とも呼ばれるものです。かつてはこの日だけにセムラは食べられていました。やがてそれが断食中の毎週火曜日となり、今ではクリスマスからイースターの時期に掛けて毎日食べられるようになっています。

これらの宗教的な名残により、セムラは別名「Fettisdagsbulleフェッティースダーグスブッレ(肥沃な火曜日の菓子パン)」や「fastslagsbulleファストラーグスブッレ(断食の菓子パン)」と呼ばれることもあります。

© Camilla Degerman/imagebank.sweden.se

スウェーデン人にとってのセムラ

スウェーデン南東部のKalmarカルマルという街にある洋菓子店「Ekelunds Konditori」のサイトによると、家庭で焼かれたものも含めて、スウェーデン人は1年あたり平均4~5つのセムラを消費しているそうで、スウェーデン全体にすると実に400万個ものセムラが毎年消費される計算となります。

たとえば『årets semlaオーレッツ・セムラ(その年のセムラ)』と検索すると、様々な媒体で各地域のセムラを品評しているサイトがヒットすることからも、スウェーデン人がセムラに高い関心を寄せていることが窺えます。

たとえば以下の「Test av semlor i Stockholm (2018) – Experternas betyg」というページでは、2018年にストックホルムの19店舗で提供されていたセムラを、『テイスト』、『アーモンドペースト』、『生クリーム』、『パン』、『見た目』の5つの切り口から評価しています。

今ではクラシカルなセムラの容姿のみならず、ラップされた状態で提供されるセムラや、スウェーデン洋菓子の象徴的存在であるプリンセスケーキと融合したセムラなど、変わり種セムラを提供するお店もあるようです。スウェーデンのセブンイレブンやスーパーなどでもセムラは提供されているので、もしセムラシーズンにスウェーデンを訪れる機会があれば食べ比べてみるのもいいですね。

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper
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