スウェーデン菓子よもやま話「シナモンロール(Kanelbulle)」について

スウェーデンのコーヒー文化に欠かせない「シナモンロール(Kanelbulle)」

スウェーデン発祥とされ、いまでは日本でも浸透したシナモンロール。スウェーデン語ではシナモンロールのことを「Kanelbulle(カネールブッレ)」といいます。本ページではリッラ・カッテンで提供しているシナモンロールについて、またシナモンロールに関する逸話まで紹介します。

コーヒーとシナモンロール

リッラ・カッテンのシナモンロール

スウェーデンのコーヒー文化に欠かせない存在と言えるシナモンロールは、リッラ・カッテンにとってもっとも大事な看板商品です。

シナモンロールは、スウェーデンの家庭からカフェまで、様々な場所で親しまれており、コーヒーが提供されるほとんどの場所でこの姿を見掛けます。シナモンロールはスウェーデンを代表する焼菓子であり、日本人にとっての寿司、いやそれ以上にスウェーデンの人々の生活に密着した存在なのです。

スウェーデン風シナモンロールの特徴としてまず挙げられるのは生地に練りこまれたカルダモン。このカルダモンという香辛料が入ることによって、スウェーデンらしい味に仕上がります。

シナモンロールの形は現在、大別すると”巻き”と”結び”の2つの方法があり、カフェによってもその様式は様々。リッラ・カッテンでは本国スウェーデンでスタンダードな”巻き”スタイルのシンプルなシナモンロールを提供しています。

リッラ・カッテンではスウェーデンの伝統的なシナモンロールのレシピを基に、日本人の好みに合わせた食感へ調整しています。本国で提供される多くのシナモンロールがやや堅めに仕上がっているのに対し、当店ではやわらかめの生地に仕上げているのです。これは「一度食べてみたいシナモンロール」ではなく「また食べてみたいシナモンロール」の味を追求した結果ですが、複数のスウェーデン人からもその味からスウェーデンを感じるという感想をいただいているのでご安心を。

また、基本的にシナモンロールはお店で毎朝焼いたものを提供するように努めています。開店直後のお店の扉を開ければ、店内はシナモンロールの薫りが広がっています。焼き立てでまだ熱の冷め切らないシナモンロールは格別です。

Alexander Hall/imagebank.sweden.se

スウェーデンの「シナモンロールの日(Kanelbullensdag)」

スウェーデンの「ホームベイキング協会(Hembakningsrådet)」により、1999年から毎年10月4日は『シナモンロールの日』と制定されました。その目的は『スウェーデン国内における菓子パン文化の啓蒙』および『イースト、小麦粉、砂糖やマーガリンの消費の推進』とのこと。

なぜ毎年10月4日がシナモンロールの日とされたのか。その理由についてスウェーデン語版Wikipediaのなかで以下のように記述されています。

Att kanelbullens dag infaller just den 4 oktober beror på att Kaeth Gardestedt och Hembakningsrådet enligt egen uppgift inte ville att dagen skulle konkurrera med andra mattraditioner såsom semlor, kräftor eller surströmming. År 1999, när kanelbullens dag lanserades, var den 4 oktober dessutom internationella barndagen, och “en tanke med kanelbullens dag var att det skulle vara en omtankens dag”.

Kanelbullensdag – wikipedia(スウェーデン語)

要約ですが、制定者によると「セムラやザリガニ、シュールストルミングなど、ほかの食に関する記念日と競合しないようにしたから」だそうです。そして制定された1999年の10月4日は”世界こどもの日”でもありました。そのことがまた記念日のことを想起させてくれるということで、それもまた記念日を定める理由のひとつになったようです。

Björn Tesch/imagebank.sweden.se

スウェーデン語「カネールブッレ(Kanelbulle)」の意味

日本語や英語では”シナモンロール(Cinnamon Roll)”と呼ばれていますが、スウェーデン語の「カネールブッレ(Kanelbulle)」の本来の意味をご存知でしょうか。

スウェーデン語を直訳すると「カネール(kanel)=シナモン」と「ブッレ(bulle)=ちいさくて丸いもの」の2語で構成されている単語なのです。余談ですが、スウェーデン料理としてしばしば紹介される”ミートボール”も「シュットブッレ(Köttbulle)」にも「bulle」が入っていますね。「kött」はもちろん、”肉”の意味です。

伝統的な『巻き系シナモンロール』ではない『結び系シナモンロール』は、「ロールしていないじゃん」と思われてしまいますが、そもそもスウェーデン語には”ロール”の意味は入っていないのです。ちなみにスウェーデン語版Wikipediaによると、シナモンロールは「カネールスネッカ(kanelsnäcka)=シナモンかたつむり」や「カネールスヌッラ(kanelsnurra)=シナモンぐるぐる」と呼ばれることもあると書いてあります。

もしもスウェーデンでこの伝統的なフォルムのシナモンロールをどうしても食べたいのであれば、どうぞ「kanelsnäcka」を探してみてください。

参考URL

Tuukka Ervasti/imagebank.sweden.se

スウェーデンのシナモンロールに関するトリビア

シナモンロールについて面白そうな逸話をいくつかご紹介します。シナモンロールを食べながら、これらのことを思い出してみてください。

1. シナモンロールの起源はスウェーデン
現在はヨーロッパや北アメリカ、日本でも親しまれているシナモンロールは、1900年代にスウェーデンで誕生したと言われています。小麦や砂糖が自国で調達できるようになり、かつては贅沢品だった甘いパンを家庭でも焼くようになりました。その時にシナモンロールが誕生したそうです。第一次世界大戦が終わり、材料の調達が容易になってからシナモンロールの人気が上がりました。10月4日のシナモンロールの日には、人口1,000万人ほどの国でありながら、およそ800万ものシナモンロールが消費されると言われています。
2. シナモンロールの歴史はよくわからない
スウェーデン南部のルンド(Lund)にある「クルチューレン文化史博物館(Kulturen)」のアンデシュ・ヤンソン(Anders Jansson)氏によると、シナモンロールの起源について詳しいことはわからないそうですが、1920年代には一般的な焼菓子として存在していたようです。経済的に豊かになるにつれ、次第に材料として高価なものを使うことができるようになり、1951年には「わたしたちの料理本(Vår Kokbok)」という本のなかでシナモンロールなどのレシピが登場していました。そして1952年にはアーリングソース(Alingsås)で1つあたり10オーレで売られており、その価格から子供たちが朝食休憩のときに買って食べていた、とされています。ある女性の証言では、1952年に結婚したとき、自分の育った家にはなかったシナモンロールを家庭で焼いていたとのことです。
3. シナモンと渦巻
参考にしたページにて、スウェーデンの雑誌「パンの雑誌(tidningen Bröd)」からの引用が紹介されていました。シナモンは世界最古のスパイスのひとつなのだそう。ちなみにシナモンはラテン語で「小さな管」を指す言葉とのこと。そして渦巻型は、古いパンのフォルムのなかのひとつであり、宗教的や祭事を象徴する形とされていたようです。渦巻型のシナモンロールは、古い文化の融合の産物であり、それが現在に受け継がれているものなのですね。

参考URL

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper
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