あなぐら@スウェーデン絵本の仕入れのハナシ

スウェーデン絵本専門店だから体験できたことや思うことをつらつらと書き綴るヒミツのあなぐら。スウェーデン絵本の仕入れについて。

スウェーデン語の絵本は買い付けに行っているんですか?とよく聞かれます。

夢を壊すようで申し訳ないですが、2年に1度くらいスウェーデンに行ければいいくらいですね。

正直なところ、渡航費や滞在費、そして本の輸送費を考えると、直接自分が仕入れに行くことで大赤字になってしまいます。また、本業があるので、長期間の休みを取るのもなかなか難しいワケで。

ではどうやって本を仕入れているかというと、普段は現地に住んでいるスウェーデンの友人・知人に本の購入を手伝ってもらうことが多いです。

そうはいってもスウェーデンの様子見を含めて直接自分で本を買いに行きたいのが正直なところ。そこで、昨年2015年4月にスウェーデンに赴きました。本屋に並んだ絵本を直接自分の目で見ることで、予想もしていなかった絵本に出会うこともありますから。

しかし、徐々に変わりつつあるスウェーデンの本を取り巻く環境に戸惑ってしまいました。

古本屋さんの状況

ストックホルムの中心から近いところに、とても大きな古本屋さんがあります。入り口だけ見るとそれほど大きくなさそうなのですが、とても奥行きがある本屋さん。ここに行くといつも大荷物を抱えて店を出てくることになります。

しかし、そのストックホルムで一番大きな古本屋に行って感じた違和感。店の棚に並んでいる絵本はほとんど売れ残りの本ばかりという印象を受けたのです。

大学のときやLilla Bokhandelnを始めるときに訪れた2013年には、手頃な価格の絵本でも金銭的な理由で欲しい本が買えなかったのですが、仕入れる気十分に訪れた今回はそもそも欲しいと思える本がなかったのです。

個人的にはいつか来ると予想している「古書店におけるスウェーデン絵本の枯渇問題」。段々とリアル古本屋さんからいい絵本が無くなってしまうと思うのです。

そもそもスウェーデンは10年前には800万とか900万とか言われているくらいの人口しかいない、世界的に見てもそれほど大きくはない国です(今は移民政策とかもあるから人口も変わっているでしょうけど)。少ない人口しかいないのですから、一冊あたりの出版部数が少ないのは明らかですよね。

絶対数が少ないうえに、それが年を経て捨てられたり、誰かの手に落ち着いたりを繰り返すことによって、古いスウェーデン語絵本の実際の流通量はかなり少ないんじゃないかと予想しています。

従来は古書店を媒体にして循環していた本も、いまではネットで取引されることが多くなりました。今後もリアル古書店で扱われる絵本はどんどん少なくなるのかな、と。

スウェーデンにはブックオフのような大手古本チェーンもないので、大量にガサっと購入して大規模に売るというシステムを取る店がない以上は、小さな古本屋などを地道に巡るのが街での本の集め方になってしまいます。

個人経営の古書店では薄利多売の戦略もとれないから、そこまで安い値段で売ってくれるわけではないですしね。

リアル古書店で本を仕入れてそれを日本で売るのは本当に難しいです。

新本を扱う本屋さんの状況

新本を扱う本屋を巡ってみても、違和感が。

前回スウェーデンに来た時にはどの店にも置いてあったような人気の絵本が、どの店にも見つからないというケースが多かったです。

出版されてから絶版になるまでのサイクルが短くなったのか、もしくはもう本は街の本屋さんで買う時代ではなくネットで買うしかなくなってしまったのか。

日本でも言われている出版不況という言葉がアタマをちらつきますが、あくまで統計の数字を見たわけではないので、個人的な印象でしかありません。ただ、手に入れたいスウェーデン語絵本を購入することのハードルが上がっている気がします。

ちなみにスウェーデンの新本は店ごとに自由に価格が設定できるので、ワゴンセールとかやっていたりします。労力に見合わないかもしれませんけれども、いくつかの本屋を巡って一番安い店を見つけるなんてこともできることがあります。

あとは冬の風物詩であるBok REA(ブーク・レーア)というイベントがありまして、この時期になると街の本屋がバーゲンセールをするんです。すくなくとも主要都市の本屋ではそのBok REA解禁日の深夜24時に本屋がオープンしたりします。日本で言うボジョレー解禁日のような感じ?

しかしまあ、新本を扱う店も少なくなっていると思います。留学中には存在していたBokus(ボーキュス)という書店チェーンがAkademi Bokhandeln(アカデミー・ブークハンデル)というもうひとつの書店チェーンに吸収されてしまったり。

日本のみならずスウェーデンの本屋も厳しいんですね。

Lilla Bokhandelnの状況

上記のような事情もあり、スウェーデンに本を買いに行ってもそもそも街中でピンポイントに欲しい本を探してもなかなか売っていないのです。

古い絵本は一冊一冊が本当に一期一会の状態で、売れてしまったら再入荷の目途が立たない絵本も沢山あります。新刊絵本だって、一度購入を見送ると再入荷されないことがあったりなかったり。

Lilla Bokhandelnで北欧食器を少しだけ扱っているのですが、ちょっと今回のハナシに関連しています。本を買いに行ったのに肝心の本が売っていないのだから、スウェーデン滞在中に何もすることが無くなってしまったんです。そこで、仕方がないから北欧食器を買い回ったんですね。素人がパッキングして食器を送ったせいか、日本で開けた荷物の多くがクラッシュしていましたが。こういうときに使うんですね、「とほほ」って。

ホントはLilla Bokhandelnとして古絵本をメインに販売したいのですけどね、最近はそういった古本枯渇問題もあり新刊絵本も積極的に取り入れる必要があるなー、と考えています。

そんな背景もあり、近ごろは新刊絵本を多めに取り寄せているのですが、読んでみると予想以上に面白い。アート作品的な絵本だと、文字がほとんどない絵本なども視覚的に楽しめますしね。

ということで、スウェーデン絵本の仕入って意外に大変なんだよ、というハナシでした。

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper

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