
ぼうしをぬぎなさい、モルテン! Ta av dej mössan, Mårten!
av (Nordisk Rotogravyr)
モルテンが買ってもらった帽子は、
被れば願いを叶えてくれる帽子でした。
「モルテンには新しい帽子が必要ね」と、ママはいいました。
フランソンス百貨店のショーウインドウに並んだたくさんの同じような帽子のなかから、モルテンは「エッペル・パッペル、ソッケルスヌート…(スウェーデン版の『どれにしようかな』)」と、適当にひとつを選び出し、その帽子を買ってもらいました。ピッタリの帽子を買ってもらったので、それを被って帰ります。
家へ帰る途中に公園に差し掛かると、一匹のスズメが飛んできました。それを見たモルテンは「自分も飛べたらいいのにな」と思います。すると突然からだが羽根のように浮かび上がったのです。モルテンは何が起きたかわからないまま。植木の枝にぶつかって帽子が脱げると、モルテンは地面に落ちました。
身の周りで不思議なことが起こり続けると、やがてモルテンはきっと新しく買ってもらった帽子のせいだと勘づきます。家に着いてから、この帽子の力を借りて自分のささやかな願いことを叶えようとする度に「家のなかでは帽子をぬぎなさい」と叱られてしまうのでした。
日本は特に礼儀作法を重んじる文化だと思うのですが、かつてのスウェーデンでも礼儀作法を重んじていたであろうと思われる描写が絵本にしばしば登場します。
モルテンのように室内では帽子を取るように口酸っぱく注意されたり、目上の人間にはおじぎで挨拶をしたり。スウェーデンにはあまり上下関係にうるさくない、比較的フラットな文化という印象があるので、このような文化があったことを自分は意外に感じます。
ちなみに作中でしっかりと叶ったモルテンの願いは「ドアマットが飛んで、重い荷物を階段の上まで運んでくれないかな」でした。残念。
(文: ビョルネン・ソベル)
発行年 | 1957年 |
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印刷年 | 1957年 |
作者 | Eva Billow (エーヴァ・ビロウ) |
出版社 | Nordisk Rotogravyr |
サイズ | W: 200mm x H: 240mm |
ページ | 32ページ |

エーヴァ・ビロウ Eva Billow (1902 - 1993)
エーヴァ・ビロウは絵本クリエイター、作家、グラフィックデザイナーなどの分野で幅広く活躍し、美術の教師としての一面も持ち合わせていました。漫画シリーズ「カイサとスヌッラン(kajsa och Snurran)」は掲載紙をまたぎ、スウェーデン・ジャーナル紙や子供雑誌クルンペ・ドゥンペなどで長らく連載されました。ビロウの絵本は細かい部分まで緻密にデザインされ、あまりデザインが施されることのない裏表紙や見返し、印刷会社のクレジット表記に至るまで絵本の世界観を統一することにこだわりを持っていました。
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