あかいバスとみどりのクルマ Röda bussen och gröna bilen
av (Bonnier)
スウェーデンを代表する絵本作家「エルサ・ベスコフ」、
最後の絵本作品の主人公は2台の自動車でした。
絵本のタイトルが示す通り、『あかいバス』と『みどりのクルマ』にまつわる短いおはなしの2つを収録した作品で、1953年に79歳で亡くなったエルサ・ベスコフの生涯において最後に出版された絵本でもあります。
表紙をめくった扉ページには「Bilderbok till Johan från farmor」という副題と、表紙と同じ子供が『あかいバス』と『みどりのクルマ』で遊ぶ姿が書かれており、この絵本が孫のヨーアンのために描かれたものであることがわかります。表紙の子供がきっと孫のヨーアンなのでしょう。
前編の『あかいバス』にまつわるおはなしのタイトルは、「MAMMAN OCH BUSS-CHAUFFÖREN(お母さんとバス運転手)」。子供をたくさん連れたお母さんがバスに乗って出かけようとしますが、降りるべき停留所の名前を忘れてしまったということで、バスの運転手から自分が降りるべき停留所の名前を思い出すためのきっかけをもらうべく、いくつかの質問をしていきます。オチがまるで落語のようなおはなしです。
後編の『みどりのクルマ』にまつわるおはなしのタイトルは、そのまんま「DEN GRÖNA BILEN(みどりのクルマ)」。ガソリンを飲みすぎて、酔っ払いのようにフラフラになってしまったクルマが、運転手が離れたスキをついて勝手に一人で走り出してしまいました。警察官の静止も振り切って暴走を繰り返すクルマの行く末は…?といったおはなしです。
自然を舞台にしたファンタジーや牧歌的なスウェーデンの時代を背景を中心に19世紀末ごろから作品を発表し続けてきた印象のあるエルサ・ベスコフ。彼女の生涯最後の作品の主人公が2台の自動車という、活躍してきた時代のあいだに横たわった変化の激しさを感じます。
初版が発行されて以来再版されることがなかったせいか、なかなかお目に掛かれない絵本でしたが、2016年にピクシー絵本(ミニサイズ絵本)として復刊されたことで、どうにか作品に触れやすくなりました。
(文: ビョルネン・ソベル)
発行年 | 1952年 |
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印刷年 | 1952年 |
作者 | Elsa Beskow (エルサ・ベスコフ) |
出版社 | Bonnier |
サイズ | W: 220mm x H: 280mm |
ページ | 13ページ |
エルサ・ベスコフ Elsa Beskow (1874-1953)
エルサ・ベスコフは19世紀末よりイラストレーターとして活動をはじめ、1897年に自身による初の絵本「Sagan om den lilla, lilla gumman(ちいさな ちいさな おばあちゃん)」で絵本作家デビューしました。かつての牧歌的なスウェーデンの姿や豊かな自然を背景とした作品を多く手掛けました。ベスコフの作品に登場するキャラクターのなかには、彼女の子供たちや親戚、ご近所さんたちがモチーフになっている場合も少なくないそうです。
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