スウェーデンおつかい旅 2017(夏)@第18話:だいぶ変わったマルメに対する印象

2017年6月から7月にかけて、北欧スウェーデンとフィンランドへおつかいへ行くことにしました。その様子を準備段階からまとめていきます。

昨日の晩、5日間を過ごしたストックホルムから夜行列車に乗り、マルメへと向かいました。このマルメでの主な目的は実は買い物ではなく、Facebookを通じて面識を持たせていただいた日本人の方とお会いすることでした。

夜行列車にてストックホルム中央駅を午後11時に出発、スウェーデンとデンマークを結ぶ街とも言えるマルメに向かいます。夜行列車ということで、移動費と宿泊費をうやむやにさせてお得な気分を味わおうという魂胆だったのですが、これが甘かった。二等車だろうが寝台車であろうがこれはもう空間をシェアする利用者の人間性に左右されるものなのですが、ひたすら五月蝿い。2列前だと思われる一組がずっと通常どおりの音量で会話をお届けしてくるわけです。

自分は外国人としてこの国に足を踏み入れているため、まあしょうがないということで自然に眠気に負けるタイミングを待つことにしました。郷に入りては郷に従うというのが海外旅行のひとつの嗜みというモノでしょう。好きなだけ騒ぐがいい。

午前7時を迎えるころ、電車はスウェーデン南部にある第3の都市マルメに到着しました。スウェーデン人の朝は早いので、この時間にすでに駅を行き交うヒトたちが大勢いました。

自分は駅のロッカーに荷物を預け、とりあえずマルメで何かすることがあるのかを調べるために観光案内所で地図をもらうことにしました。スウェーデンのそこそこの規模の街では『Turistbyrå(チューリストビーロ)』という観光案内所があり、目的地に着いたらまずそこに行くというのが基本のようなものです。

駅の案内図に従って観光案内所があるハズの場所に行ってみると、何もない。朝早いからまだやっていないのかもしれないけれども、それにしても看板くらい出しておくものだろうと思いつつ、スマホで観光案内所がほかにないかどうか情報を探すことにしました。

すると、『Malmö turistbyrå läggs ner – även sajten Malmotown försvinner』というスウェーデン語の記事を見つけました。どういうことかというと、「マルメの観光案内所がなくなり、観光案内のためのサイトまでも消滅した」ということらしいです。この記事が投稿されたのが2017年2月ということで、まだそんなに日も経っていないので信憑性があります。

ザッと読んでみたところ、減少を続ける観光客をマルメは見限ったということらしいです。…って、そんなことある?松岡修造にもっと応援してもらえばよかったですね。「観光客来るよ!やればできるよ!」って。

そんなことなので、手持ちのスマホの地図のみでまだ寝ぼけている街を歩いてみることにしました。このマルメという街は自分にとって初めて訪れたスウェーデンの街です。大学の研修旅行時にコペンハーゲン空港から列車で海峡を渡り、このマルメに一泊滞在しました。

その滞在以降はとくにマルメに用事もなかったため、今日は実に10年以上ぶりのマルメとなります。この銅像の写真撮ったのをものすごく憶えています。当時はもしかすると”写るんです”だったかもしれません。カシャ、ジーコジーコって。意味がわからない若者は置いていきます。

時刻は午前8時にまだならないところ。おおよその店舗がオープンする午前10時まで、さすがにただ街を歩いて時間を潰すにも体力的に厳しい。ということで、この時間を利用してひとつの洋菓子店(以下、コンディトリー)に行くことにしました。このコンディトリーはお会いする約束をしている日本人のエリコさんからお勧めいただいていたお店です。

100年以上の歴史を持つ老舗コンディトリーで、『Hollandia(ホッランディア)』の名が示すように、オランダに多少のインスピレーションを受けているようです。中央駅からは徒歩で15分掛からないくらいでしょうか、そんなに近くはないです。

午前7時45分オープンということで、今日のオープンから数分が経ったところで入店しました。多分、その日における2人目の利用客としてお店に足を踏み入れました。ちなみに1人目は顔なじみっぽいおばあさま。

人気のコンディトリーの雰囲気をゆっくり楽しむには午前中に行くのがいいのかもしれません。実際、午後に店の前を通りかかった際には結構なお客さんが入っていました。やっぱり人気のある店なのですね。

ホームページに書いてある情報によると、マルメで最も古いコンディトリーとのこと。1903年にホッランディアとしての営業を始め、1950年代に改装をしていまの形になったようです。で、そのときに家具をオランダから取り寄せて店内に用いたために名前を『Hollandia(ホッランディア)』にした、と。

自分がオーダーしたのは2つの焼き菓子とコーヒー。焼き菓子の名前は残念ながらいま詳しくでてこないのですが、1つはスウェーデンの伝統洋菓子である『Vaniljhjärta(バニラのハート)』のカタチがまんまるバージョンのもの。もう1つは、「Sarah Bernhardt(サラ・ほにゃらら)」です。読み方が難しいので、ほにゃららさせていただきます。

前者のバニラの方は、ストックホルムで食べたバニラハートよりも全然クオリティ高かったです。やっぱりストックホルムではいった店があんまりよくなかったのかも。でもカッテンのバニラハートも負けていませんでしたので、よかった(個人的に正直な感想です)。

後者のサラホニャの方は、アーモンドペースやチョコレートが層になっていて、濃厚な味でした。自分は見たことのない洋菓子だったし、洋菓子名がヒトの名前だったので、「このお店で特別につくっているものですか?」と聞いたのですが、そうでもないらしいです。まだちゃんと調べてないんですけどね。

教訓、スウェーデンの店すべてがおいしいわけではない。短い滞在で失敗な店に入ってしまうともったいないので、下調べはした方がいいかもしれませんね。自分は失敗も楽しんでいますが、さすがにもしこれが1度目のスウェーデンでマズいスウェーデン洋菓子を食べたら印象悪くなります。

その後、街が目を覚ます午前10時までさらに時間があったので、ホテルの場所をチェックしておくことにしました。スーツケースを持っていない状態で場所を知っておくことで、重い荷物を持っていても最短距離でアクセスすることができるようになりますから。意外に階段があったり、石畳があったり、ヨーロッパの街は地図だけではわからない道の状態によってかなり移動労力が左右されてしまいます。

で、実際に中央駅からホテルまで歩いてみたら、自分の想像していた駅から数分なんて青写真とはとんでもなく違っていた。歩いて20分から30分くらいですかね。予約するときにちゃんとチェックしておかないから(こういう状況に慣れているからいいんですけどね)。これは20キロ以上あると思われるスーツケースを持って歩くとしたら大変だぞということで、滞在が1日だけなので本当はケチって買うつもりがなかった市内バスカードを購入することにしました。一度歩いてみておいてよかった。

そして、そのホテルの近くにあったのが、『Turning Torso(ターニング・トルソ)』という高層マンション。ヨーロッパで最も高さのたかい住宅としてその名前は知っていましたが、こんな駅から離れたところにあったとは。

マルメのこの地域はどうやら高級住宅地が密集しているらしい。高級かどうか、実際にいくらくらいするのか相場は知らないけれども、明らかに高いハズ。なんかね、もういちいちオシャレなんですよ。ストックホルム中心地にある伝統的なオシャレとは違う、モダニズムを感じされる様々な外観を持った集合住宅は見ていて飽きません。

中心地近くにもさまざまなモダン建築が点在しているので、建築が好きな方であればマルメがかなりオススメです。きっと建築をテーマにしている『ブルータス・カーサ』であれば、この地域の特集を組んだことがあるハズ。日本に帰ったら探してみようかな。

そんなこんなで街をうろうろしたり、店を回ったり、ホテルにチェックインしたりして時間を潰していると、やがてエリコさんとの待ち合わせの時間となりました。

Facebookを通じたやり取りの中で「何が特に食べたいものありますか?」と聞かれたので、「ケバブがいいです」と答えていました。スウェーデン人に「いまやケバブはスウェーデン料理のひとつでしょ」というとなんかウケてくれます。でも本当にピザとケバブはスウェーデン国内のどんなに小さな街にもあるくらメジャーな料理なので、自分の中ではポストスウェーデン文化として堂々と日本に紹介してもいいくらいだと思っています。

実際に国営ラジオでも「もっともスウェーデンらしいスウェーデン料理といえば?」みたいなリスナー投票があって、その投票候補のなかにケバブやピザが入ってましたから。

さらに聞くところによると、「スコーネのケバブが一番おいしい」という情報もちらほら耳に入ってきていました。スウェーデンケバブ同好会としては、それは比較しておかないといけませんねということで、今回の出会いの場に選ばれたのは地元でも評判の高いと言う中東料理屋。マルメ中央駅でエリコさんと待ち合わせをし、今日一緒に夕飯を食べるほかの2名様とは店で合流しました。

エリコさん同様にマルメに住んでいる日本人のカノマティさん(あだ名です)と、日本への留学経験もあり日本語が堪能なリーサさん。留学先は岐阜ということで、失礼ながら意外なところに留学先があるものだな、と。日本企業にお勤めということで日本語がかなり上手。もちろん苦労して習得されたのでしょうけれども、日本語を勉強した多くのスウェーデン人は日本語レベルが本当に高いですね。(あー、そういえば何で日本語に興味を持ったのかという一番基本的な質問を忘れてしまいました。)

エリコさんたちとはスウェーデンでの暮らしで大変なこととかを伺うこともできました。いろいろとホンネらしい言葉も聞けてよかったですし、楽しかったです。とにかく一言でまとめると「Gläset är alltid grönare på den andra sidan(となりの芝はあおい)」ということです。自分は正直なところ日本の文化の方が性にあっていると感じているので、この先もとりあえず日本でいいですね。

本当は店からスカイプとかでもお話を聞ける機会をつくったりできればいいんですけれども、時差の関係でなかなかそれも難しいですからね。悩ましいところです。

彼女たちと分かれたころ、時刻は21時をまわっていました。日本で培った日時計の感覚が完全に狂っているので、外で誰かに会っていると時間を忘れてしまいがちです。

エリコさんとバスの方面が一緒だったため、バスを降りてお別れをしたのち。ふと足が向いたのがオーレスンド海峡方面の岬。ホテルにチェックインした際にエレベーターホールの窓からオーレスンドの橋が架かっているのが目に入ったのでした。オーレスンド海峡はデンマークとスウェーデンの間に横たわる海。つまり、その橋の向こうはデンマークです。

これまでスウェーデンに来る際に何度かこの海峡を列車で横断したことはありましたが、こうして客観視できる場所に来たことはありませんでした。写真にちょっとだけ橋が見えるのですが、わっかるかな〜、わっかんねぇーだろうな〜。っていう感じのネタでおなじみの『松鶴家千とせ』という漫談家がいるので、よかったら調べてみてください。

個人的なマルメの感想としては、ストックホルムよりも温かみを感じる街だったなということ。接客してくれた店員さんの笑顔遭遇率が高かったです。観光するにはちょっと物足りないですが、住宅を含めてモダン建築物は素晴らしいです。コペンハーゲンからスウェーデンに入るとしたら、1泊マルメで滞在するのもありですね。

ただし、バス交通機関はポンコツですので気をつけた方がいいかもしれません。自分が乗ったバスは2番線だったのに3番線の道を走り、ごめんなさいもなく、乗客がみんな不思議そうな顔をして「いったいこのバスはどうしたんだ」みたいな表情を浮かべていました。自分は「この状況はどういう結末を迎えるのかな?」とワクワクしていましたが、日本ではあり得ませんね。

最後に、物価はストックホルムより安そうです。

じつはこの日、大雨が降るという予報がでていたのです。カノマティさんは「長靴を履いてきてしまったのに、雨降らなかったじゃん!」と神様に憤っていらっしゃいましたが、自分にとってはありがたかったです。”バタフライエフェクト”という表現がありますが、ブラジルで蝶がはばたけばテキサスで竜巻が起こるという論です。もし、カノマティさんが長靴を履いてこなければ、今日は大雨だったかもしれません。ということで、今日のMVPはカノマティさんに贈りたいと思います、

そして気がつけば、部屋の窓に雨が打ち付けていました。

ビョルネン・ソベル

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper

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