ビョルネンは時間泥棒@19年05月17日(金)

スウェーデン洋菓子店のブログのようなものですが、スウェーデンがまったく関係ない話題ばかり。

「御魚ギャラリー」展示内容

  • 19年04月09日(火)~19年05月31日(金)
    『スウェーデンの学校の国語教科書展』

店外イベント

スウェーデン語教室

今後のガイダンス開催予定日(いずれも16時~17時)
  • 【05月】23日(木)
  • 【06月】01日(土)/06日(木)/20日(木)/22日(土)/27日(木)

今日の時間泥棒


久しぶりに本の紹介でも。

エルサ・ベスコフの生涯最後の絵本作品となった「RÖDA BUSSEN OCH GRÖNA BILENルーダ・ブッセン・オ・グルーナ・ビーレン(赤いバスと緑の自動車)」です。いつぞやこの作品について言及したこともあったかと思いますので、もしかすると既視感を憶える方もいるかもしれませんが。「赤い…」と「緑の…」と来れば、多くの方が武田鉄矢を…いや、なんでもないです。

エルサ・ベスコフが亡くなったのが1953年。そしてこの絵本が出版されたのが1952年。スウェーデン王立図書館(Kungliga biblioteket)のデータベースを確認する限り、初版が出版された1952年以降、2016年に復刻版としてピクシー絵本として出版されるまで、ずっと絶版状態になっていたようです。


表紙に描かれている少年は、「赤いバス」と「緑の自動車」を抱えていますが、絵本は2部構成。「赤いバス」と「緑の自動車」が共演することはなく、前半は「赤いバス」のみにまつわるエピソード。

母親に連れられた子供たちが、赤いバスでお出かけする様子を描いています。特に事件らしいものも起こらず、淡々とした短いストーリーです。

イラストの右下に『EB-51』というサインが入っているのですが、恐らくこのイラストを1951年に描いたということなのでしょう。


後半のエピソードの主人公は、ガソリンを飲み過ぎて変になってしまった「緑の自動車」。運転手が目を離した隙に暴走してどこかへ行ってしまい、いろいろなヒト達に迷惑を掛けるというストーリー。

これまでの作品では自然を舞台にした絵本が多かったベスコフが、自動車をテーマとした物語をつくったこと。そして、登場人物の服装がちょっと現代っぽい印象を醸し出しているところから、自分は時代の移ろいを感じました。

ベスコフがイラストレーターとして仕事を始めた1890年代から、この絵本が描かれた晩年の1950年代まで。そのあいだに人々の生活様式も大きく変わったんでしょうね。

このエルサ・ベスコフによる最後の絵本作品をパラパラとめくっていると、たしかにベスコフの絵なんだけれども、なんだかベスコフらしくない気もしてしまって、ものすごく不思議な感じがしてくるんです。ずっと昔のヒトだったハズなのに、自分の生きている時代とほんの少しだけれども重なっちゃっている違和感というか。

伝わるかどうかわからないけれども。今朝まで箱根にいたハズなのに、夕方に帰ってきてから自宅近くのイオンで買い物をしていると、「あれ?さっきまで箱根にいたのに、もう日常だ」ってなる。そんな不思議な感覚。


ちなみに。先述したピクシー版がコチラ。

初版の絵本とはレイアウトが大きく変更されていたり、本文がベスコフによる手書き文字ではなく、フォントが使われています。

復刻版が出たとはいえ、現在の本の流通量はかつてと比べると規模がかなり縮小しているため、2000年代に入ってから出版された本だとしても逆に入手困難な状況に陥っているものも多いんですよね。むしろ1900年代前半にヒットした本の方が手に入りやすいんじゃないかと思えるくらい。

あと数十年もすれば、本は骨董品のような存在になっているかもしれません。

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper
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