ビョルネン日報

ビョルネン日報@18年09月19日(水)はれ

18年09月19日(水)はれ。今日一日、お店であったあんなことやこんなことだったり、思ったことなどを綴ります。

「御魚ギャラリースペース」展示内容

現在お申込み受付している店内イベント

今後のガイダンス開催予定日(いずれも16時~17時)
  • 【09月】13日(木)/22日(土)/27日(木)
  • 【10月】11日(木)/25日(木)/27日(土)

店外で開催予定のイベント

今日のリッラ・カッテン

洋菓子店をはじめとした個人店は、言ってしまえば人気商売的なところもあるのでしょうけれども、今日も世間の興味に迎合しない話題を。とはいえ、日本のスウェーデン児童文学史における貴重な資料となりうる一冊の紹介です。

今日、店から帰ってくるとポストにスウェーデンからの荷物が投函されていました。ついに届いた。ずっと探していた本「Ivik den faderlöse(イーヴィク・デン・ファーデルーセ)」のスウェーデン語版。

いくつかの言語に翻訳されている作品であり、言語によって装丁はまちまち。しかし個人的にはスウェーデン語版の装丁が断然力強さが感じられるので、どうしてもこのスウェーデン語版が欲しかったのだ。

日本語への翻訳出版もされており、邦題は「北のはてのイービク(野村泫 著/岩波少年文庫 刊)」。どうせ原書はしばらく手に入らないだろうし、せっかく日本語訳が出ているのであればそれを読んでしまおうと、いつだったかこの場でも紹介した本です。

ちなみにスウェーデン語タイトルを直訳すると「父のいないイーヴィク」のような意味。アメリカのロックバンド、Van Halen(ヴァン・ヘイレン)の1978年リリースのデビューアルバム、その名も「Van Halen」が日本で「炎の導火線」としてリリースされたような「どう訳したらそうなったのか」と問いただしたいくらいのインパクトはありませんが、邦題は日本オリジナルのものです。

しかし世界規模でみれば星の数ほどある作品のなかから、どうしてこの本を日本語へ翻訳しようと思い立ったのか。その経緯も気になるところ。

冒頭の「貴重な資料」である理由、じつはこの挿絵はデンマーク出身のイラストレーター、イングリッド・ファン・ニーマン(Ingrid Vang Nyman)によるもの。そして彼女にとってのデビュー作にあたる作品なのです。

富士美術館で開催している「長くつ下のピッピの世界展」の図録のなかでもヴァイエン美術館館長であるテレサ・ニルセンさんが書いていますが、ニーマンの親戚のおじさんが北極探検家であり、その子供であるピーパルク・フロイゲンが幼少期に過ごしたグリーンランドでの体験をベースに綴られた物語です。つまり、ニーマンの挿絵家としてのデビューはいとこがきっかけだったとのこと。

そしてその後にスウェーデンの大手出版社であるRabén&Sjögren(ラベーン&フューグレーン)から声を掛けられて、アストリッド・リンドグレーンの出世作である「長くつ下のピッピ(Pippi Långstrump)」の挿絵を担当するに至る、と。

つまり、リンドグレーンはこの「父のいないイーヴィク」に描かれたニーマンの挿絵も見ていた可能性があるわけで。イーヴィクとピッピは、ともに1945年に出版された作品なので、イーヴィクのイラストがリンドグレーンの作品への挿絵画家選定に対して影響を与えていなかった可能性もありますが、そこのところはどこかに文献落ちてないのかな。リンドグレーンがニーマンと組んだ経緯について。

ちなみにリンドグレーンのデビュー作も「長くつ下のピッピ」ではありません(デビュー作は「Britt-Mari lättar sitt hjärta(邦題:ブリット‐マリはただいま幸せ)」)。つまり、「長くつ下のピッピ」は当時において両者とも無名新人クリエイターが組むことによって作られた作品というわけです。

ちなみに。冒頭の写真では背表紙が不細工なテープで補強されていましたが、剥がしました。購入当初からボロボロだということはわかっていたし、この状態であっても本のカタチを保ったまま手元に届いたのは嬉しいことです。

この本についてはスウェーデン語においてもネット上にほとんど情報がないので、残存部数自体もきっと少ないのでしょう。世界がまだ混沌としていたであろう、第二次世界大戦の終戦年にあたる1945年に出版されたということももしかすると影響があるのかも。

イングリッド・ファン・ニーマンが担当した作品でもう1冊欲しいのがあるので、根気よく市場のパトロールしつづけます。

登録したスウェーデン語絵本情報:
Ivik den faderlöse av TECKNINGAR: Ingrid Vang Nyman(イングリッド・ファン・ニーマン)

それは北グリーンランドの穏やかな夏の日だった。マッチの火を消すほどの風は吹いておらず、海の水面では水が油のように輝いた。この穏やかな水面の上に、カヤックに乗ったイーヴィクと彼の父であるマルヤルクがいた。イーヴィクのカヤックは父親のそれよりも小さかったが、少年はすでに氷上のアザラシを捕まえる父親の後を追っていくことが許されるほどに十分大きくなっていた。マルヤルクはいまイーヴィクに助言を与えている。少年にカヤックの上から獲物を狩るための知識を与えるときが来たのだ。

ビョルネン・ソベル

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