2017.4.10

スウェーデン語絵本の100冊読書メモ@009冊目:Den sagolika resan


多くのスウェーデン語絵本を扱うリッラ・カッテンが、自分たちで実際に読んだスウェーデン語絵本を紹介します。目標はとりあえず100冊です。お店では扱わない作品、または絶版の作品もあるために入手が難しい絵本も含みますがご容赦ください。

2010年発表

Den sagolika resanおとぎばなしの旅

作:Ulf Stark(ウルフ・スタルク)/絵:Lilian Brøgger
ほかスウェーデン語以外の言語への翻訳者

ヒマをもてあますアスタ。どこかへ行ってしまいたいと思っています。ひとりでいるのはつまらない、空は灰色で、オレンジだってすっぱい、サルのぬいぐるみのシッポだってなくなったままです。

「そうだ、本のなかの世界へ行こう!たくさんページがある本がいい!」

そう思いついたアスタはたちまち元気をとりもどしました。本のなかの世界へ通じるドアを開いて、そのドアをまた閉じます。そして本のなかの世界にあったのは…サーカスでした。

原作はスウェーデン人であるUlf Stark(ウルフ・スタルク)、挿絵はデンマーク人のLilian Brøgger(デンマーク語の読み方…)が担当しています。

アルファベットを用いる言語ではおなじみの「ABC本」。1ページ進むごとに、冒頭の文章のアルファベットも1つずつ進んでいきます。

たとえばこの絵本であれば、以下のような具合。

1ページ目:Asta har så tråkigt så.
2ページ目:Bok – en bra! – med många blad.
3ページ目:Cykel som hon tar till närmasta cirks.

“A”sta(主人公アスタ) – “B”ok(本) – “C”ykel(自転車)のように、冒頭のアルファベットがABCの順に並んでいきます。ここまでの流れを汲んでいるのが一般的なABC本です。

しかし、この絵本はただのABCが連なる絵本ではありません。北欧4ヶ国語、つまりスウェーデン語/デンマーク語/ノルウェー語/フィンランド語の各言語で同時に物語が進んでいきます。

こうした試みがしやすかった背景は、やはりフィンランドを除く3ヶ国の言語が似ていることが理由でしょう。ご存知の方も多いと思いますが、スウェーデン語とデンマーク語とノルウェー語はお互いに近い言語なのです。

フィンランド語のみ文法的にも語彙的にも他の3言語とは異なるシステムを持っているため、文頭のアルファベットを合わせようとちょっとムリヤリ工夫している感じがするらしいです。(フィンランド語のレッスンも持っていらっしゃる”トナカイさん”にちょっとこの絵本をみてもらったときにいただいた感想)

実はこの絵本は読書習慣を広めるためにつくられた絵本の一冊であり、本屋で販売されたことはありません。マクドナルドの子供向けメニューにオマケとしてついてくる絵本なのです。その証拠に、流通する書籍につけられるハズのISBN(国際標準図書番号)というコードもつけられていません。

全体的なストーリーはファンタジーの世界らしい突拍子もない展開ですが、ラストは「本って身近な存在なんだよ」というメッセージで結ばれています。この絵本がつくられたそもそもの目的である『読書習慣を広めるための絵本』へきちんとまとめるあたり、ベテラン絵本作者であるウルフ・スタルクの巧さですね。

ビョルネン・ソベル


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