北欧絵本@Den underbara familjen Kanin

細かく描き込まれた背景、表情豊かなキャラクター、そしてユーモア溢れるストーリーが楽しめる「おとうとうさぎ」シリーズ3作品を1冊にまとめた絵本です。

この絵本のタイトルは副題部分を入れると「SAMLADE SAGOR OM Den underbara familjen Kanin」ということで、日本語にすると「ステキなうさぎ一家のおはなし集」といった感じです。

主人公はこのうさぎ一家のおとうと。作中においても彼の実際の名前は特に紹介されておらず、「Lillebror kanin」としか表現されていません。「Lillebror」はおとうと。ということで、日本語にすると「おとうとうさぎ」としか訳せないのです。

作者のヨンナ・ビョルンシェーナ(Jonna Björntjerna)は1983年生まれ。彼女による作品はそれほど多く発表されているわけではないのですが、この「おとうとうさぎ」シリーズはBokjurynという絵本の人気投票において2007年および2010年に第1位を獲得するなど、スウェーデンの子どもたちに大人気の絵本となりました。(Bokjurynのリンク先は投票結果のアーカイブページです)

左上にいるのが、おとうとうさぎの家族たち。

ちなみにスウェーデン語ではうさぎを表す言葉が「kanin(カニーン)」と「hare(ハーレ)」の2つがあります。「kanin」はペットとして飼われていることが多いズングリムックリした「飼うさぎ」で、「hare」はスラリとした体型の「野うさぎ」なのですが、この一家はよく考えると「飼うさぎ」なんですね。

彼らが住んでいる「おとぎの森」はとても広いのです。うさぎ一家の住んでいる美しい森のエリアもあれば、恐ろしいモンスターたちがウヨウヨしている怖いエリアもあります。

しかし、ある日おとうとうさぎがブルーベリーを拾っているうちに怖いエリアにうっかり足を踏み入れてしまうことからストーリーがはじまりはじまり。

怖いエリアではお化けに出会ってしまったり。

はたまたおとうとうさぎを食べてしまおうとする魔女が住んでいたり。

怖いエリアでいろいろなモンスターに出くわしてしまいます。おとうとうさぎはこのピンチをどのように切り抜けていくのかワクワクドキドキのストーリー展開です。

怖いエリアに住んでいる親切なこびとに助けてもらったりすることも。

そして、この怖いエリアの下には地下鉄が通っているというシュールな設定。おとうとうさぎもこの地下鉄のお世話になることになります。

日本語翻訳版も出版されているのですが、原書のスウェーデン語版ではテキストが手描きです。(日本語版がどうなっているかわかりませんが…)

ときどき文字が大きく描かれたりして、その場面の雰囲気を演出します。翻訳版だと機械的なフォントに置き換えられてしまうケースも多いので、手描きテキストは原書版ならではのお楽しみポイントだったりします。

また、スヴェン・ノードクヴィスト(Sven Nordqvist)の代表作であるペットソン&フィンダスシリーズのように、物語の主軸とは関係ない小さな生き物たちがサイドストーリーを展開することも。

最初に読むときにはメインのストーリーを楽しんで、読み終わったらもう一度ページの隅々まで見渡しながら読んでみる。そんな2度楽しめる絵本でもあります。

2016年現在においてはまだ4作品しか発表されていない「おとうとうさぎ」ですが、早く次の作品が発表されないかと楽しみなシリーズです。

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper

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