スウェーデン語絵本の100冊読書メモ@026冊目:Gubbar med rim

多くのスウェーデン語絵本を扱うリッラ・カッテンが、自分たちで実際に読んだスウェーデン語絵本を紹介します。目標はとりあえず100冊です。お店では扱わない作品、または絶版の作品もあるために入手が難しい絵本も含みますがご容赦ください。

1931年発表

Gubbar med rimおじさんと韻文

著:Einar Nerman(エイナル・ネールマン)

1888年にNorrköping(ノルシューピング)という街で生まれ、1983年に生涯を閉じたエイナル・ネールマンによる絵本作品。タイトルにあるスウェーデン語の「Gubbar(グッバル)」とは”おじさん:複数形”、「Rim(リム)」とは”韻文(ライム)”の意味です。

この本のなかには、スウェーデンでいまでも親しまれている童謡の歌詞をモチーフにしたイラスト&歌詞や、タイトルの通り韻文に添えられたイラストが詰まっています。テキストには活字を一切使わず、表紙のタイトル文字に見られるように、ひとつひとつの文字をネールマンが丁寧にデザインの一部として描き上げています。

残念ながらネット上にあまり情報がなく、オリジナルの出版年すら探すのがやっとの作品です。どのようなコンセプトで作り上げられたのかも不明ですが、1ページ1ページが商業ポスターになっていたとしてもおかしくないくらいに迫力がある一冊です。

興味深いことにスウェーデン語における単語”Gubbe(グッベ)”と、それに対する一般的な日本語訳となる”おじさん”の意味は完全に同じ意味ではないようです。スウェーデンのおはなしに登場する”Gubbe”という単語には親しみが込められていて、様々な場面でこの”Gubbe”という単語が顔を出します。

ただし、日常生活におけるスウェーデン語の”Gubbe”は複雑です。街なかで知らない中年男性に”Gubbe!”と声を掛けようものなら失礼にあたる言葉なのだそうです。一方で、たとえば小さな子どもやペットに対して親しみを込めて”Gubbe!”と声を掛けたりすることもあります。

“Gubbe”というスウェーデン語には、日本人には理解できない奥深さがいろいろ詰まっているようです。もしスウェーデン人になることに憧れている方がいれば、この”Gubbe”の使い方をマスターすることが、スウェーデン人に近づく一歩…なのかもしれません。

ちなみに。スウェーデン好きの方であればご存知の方も多いかもしれませんが、エイナル・ネールマンの手掛けたイラストは、現在でもスウェーデン国内で販売されているマッチ箱のパッケージに使用されています。

Wikipedia「solstickan」より引用
När Einar Nerman fick uppdraget att rita en etikett till tändsticksaskarna var det bråttom – han använde en av sina tidigare teckningar föreställande Tummelisa (illustration till en H.C. Andersensaga) som bar en fackla. Nermans son Tom hade stått modell och konstnären gjorde nu om flickan till en pojke, tog bort facklan och målade en sol i övre vänstra hörnet.

solstickan:wikipedia

Wikipediaに書かれた情報を要約すると、このマッチ箱に使用するイラストを大急ぎで用意しなくてはならなかったネールマンは、かつてアンデルセンのおやゆび姫のために手掛けた自分のイラストを転用することにしたようです。従来は女の子だったキャラクターは息子をモデルに男の子へ置き換え、左手に持っていたたいまつを取り払って空いたエリアに太陽を配置した…とのこと。

たしかにネールマンが手掛けたおやゆび姫のイラストは、このマッチ箱のイラストにとてもよく似ています。興味がある方はネールマンのおやゆび姫、探してみてください。

ビョルネン・ソベル

リッラ・カッテンの絵本、雑貨、あと雑用を担当。本を読むことよりも、大量に並んだ背表紙や古い本の雰囲気が好き。つまり、あんまり本は読みません。葛飾出身の日本人。インスタグラムは「@lillakattenpaper

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